公立校へ通う自閉症児・ケーススタディ 日英でどう違う?

もう何ヶ月も前のことになりますけど。

カレッジでいくつかケーススタディを取り上げてグループディスカッションしました。
文化的差異になかなか驚いたケースがあったので、ぜひ皆さんも考えてみてください。
ちなみに、Legislation, policies and procedures for confidentiality and sharing informationがテーマです。


「あなたはYear1クラス(5~6歳)のTeaching Assistantです。転校生がやってきましたが、彼は自閉症の診断を受けています。彼が新しい学校・クラスに慣れるまで、学校のスタッフが皆でモニターしています。あたなは彼のクラス内でのサポートを受け持っています。あなたは彼の家族構成や言語療法士など外部プロフェッショナルとの情報にアクセスすることができます。クラス内に、ペアレントサポートの女性がいます。(学校内の正規のスタッフではなく、クラスに子供が通うためにクラス内でボランティアをしている)

ペアレントサポートの女性は、個人情報にアクセスすることはもちろんできませんが、どこからか、転校生は自閉症の診断を受けていると言う情報を手にしました。そして、「自閉症の診断を受けた子供が普通講に居るのはおかしい、他の生徒達の妨げになる、支援学校に行かせるべきだ」とスタッフに話すようになります。この女性にどう対応するべきでしょうか。」

というケーススタディです。



日本なら・・・どうなるのでしょうか。

学校のスタッフが、転校生の子がどれだけ頑張っているか伝えて、女性を説得してくれる?
転校生の両親にそのうわさが伝わり、転校生とこの女性の子供はクラスメートになるわけだから、これがいい機会、とばかりに、転校生の両親がクラスメートの保護者に理解を求める手紙を送る?
保護者会で、子供の特性を説明し、自閉症についてクラス全体の理解を求める?
先生方が、それをサポートする?

他に、日本でだったら、どんな方法がありますか?



イギリスでは、ですね・・・



Special Needs Childrenの診断内容は、完全にConfidentialityとして扱われないといけないため、外部漏れがおこるようであってはいけない。
まずは、どこから情報が漏れたかを突き止め、今後の対応を早急に検討。
(そうはいっても、学校スタッフも人間ですから、うっかり他人の前で噂話をしたりすることもあり。そうしたケースも含めて、Confidentialな情報はしっかり守られるべき、とする)
そしてもちろん、学校側が、このペアレントヘルパーの女性に転校生について一切説明することも許されない。
もし、この女性が継続的に転校生の診断内容について意見するようであれば、

The Data protection Act 1998
The Children Act 2004
The UN Convention on Rights of the Child 1989
The Special Educational Needs (SEN) Code of Practice 2001 and Disability Discrimination Act 1995/2005

などのLegislationに反していることをしっかりと彼女に伝えるべき。


・・・となるのです。
つまり、この女性、クラスに子供がいる母親の意見は完全に却下されるべき内容であるとのこと。

更に、カレッジコースのTutorの意見は、
「こんな意見を公言する女性をボランティアとはいえ学校内を歩かせることはできない、学校側は即彼女を辞めさせるべきだ!」
と強く主張していた。

この日の講義は、私にとって目からうろこだった。
もちろん、発達障害等の診断のみではなくて、家庭事情やmedication、持病についての情報などももちろんそう。
とにかく子供一人ひとりの権利が、しっかり守られている、と実感した。
少なくとも、法律上では、確実に完成度の高い教育制度である。

後は、学校側はどれだけ実践できているかなのだが。
イギリスではOfstedという組織が英国全土の学校の運営・スタッフの質・子供達の成長度合いを徹底的に全国一律の基準で持って審査するシステムがある。そして、その結果をネットで一般公開する。
私達保護者は、自分の町にある小学校を片っ端からチェックすることができる。
(興味のある方は、ぜひOfstedでググってみてください。)
全くもって、フェアなシステムである。
そして、もちろんどの学校も、このOfstedの評価を上げるのに日々必死で努力することになるのだ。


もし、私達の子供のクラスに転校生がきたり、クラス替えがあって新しいクラスがスタートした時などに、あれ、なんだかこの子の行動や言動が・・ちょっと・・・と思ったとしても。
更には、もし、万が一にでも、その子達が他の子供に危害を与えてしまったりしても。
学校側は、たとえ怒った保護者が要求しても、その子供達のプライバシーにかかわる情報を一切公開することは許されない、というわけで。

実は、Rooが公立校にこの2年半通っていた時も、私が個人的にクラスメートの保護者に「Rooは自閉症で・・」と言う以外は、全くRooの障害について話すことはなかった。
もちろんうわさはうわさを呼ぶし、何よりRooはどうみても自閉症だから、一目瞭然だったのだけど。
広汎性発達障害の子達の情報は、一切クラスに公開する必要はないし、保護者がカミングアウトして他の保護者に頭を下げて理解を求める必要もなし、というより、そんなことを学校内でさせるわけにはいかないわけで。

RooはNurseryに通い出した時から、クラス内でたまに感情が高ぶって声が大きくなったり、嫌がって参加しないアクティビティがたくさんあったり、など、かなり団体行動を乱していたと思うのだけど。
そして、そのことで、他の子供達が家に帰って保護者に文句を言ったり、その保護者が学校側に問い合わせたり・・・ということが、あったかも、しれない。なかったかもしれないけど。
そして、もしそんなことがあったとしても、私の耳には一切入ってこない。

というわけで、この2年半、Rooは公立校の普通クラスで頑張ってきて、学校側も本当によくサポートしてくれた。
クラスの調和を乱すこともあっただろうし、他の子供たちをイライラさせたこともあったかもしれない・・・
それでも、私には、いつもどれだけRooが成長してきたか、クラス内でいろいろ挑戦してきたか、他の子供達と混ざろうとしてきたか、学校側はいつもそんな角度からのみ話としてくれた。
他の生徒にどれだけ迷惑をかけたか、なんて、一度も聞いたことがなかった。

なので、私はいつもRoo主体で、Rooの成長を、クラスという集団の中で見ることができた。
Rooの成長のみにフォーカスすることができた。
外野の噂話などは、本当に一切入ってこなかった。
Rooを迎えに言ったりした時に、保護者の一人がつかつかと近づいてきて、Rooちゃんの文句を言う、なんてことは一度もなかった。誰に頭を下げることもなかった。
それは本当にありがたかった。

もちろん、それは、Rooちゃんがクラスでうるさくすることはあっても、他の生徒を傷つけることは一度もなかったから、というのもある。それは本当にRooちゃんの手柄。


いろいろ書いてしまったけど、自閉症の特性を強く持つRooが、今までハッピーに公立校へ通えたのは、学校側と、保護者を含め周りの人たちの大きな理解があったから。
私なりに学校側に不満やストレスを感じることもあったけれど、それでも結果的にRooの成長を見ると、公立校には感謝しきれない。

9月からRooは支援学校にフルタイムで通い、公立校にはもう2度と通うことはないだろう、と思う。
それでも、きっとRooは公立校で過ごした日々をこれからも覚えていてくれるはず。
とてもいい経験になった、と確信している。



と書いているけれども、イギリスの教育システムが日本のよりいい、などと言いたいわけではもちろんなくて。
どちらかと言うと、日本のきめ細やかでとても辛抱強い学校スタッフの対応をうらやましく思ったりすることもあるわけです。
イギリスは、いい意味でも、悪い意味でも、個人主義。
Rooの一個人としての権利、子供としての権利、自閉症という障害を持つSpecial Needs Childとしての権利をきちんと尊重してもらっている分、自分の行動にきちんと責任を持つことも要求される。
ただ、現在イギリスに住んでいる私が、まだRooが3,4歳の時からどうしてもRooにしてやりたかったことがあって、地元の公立校がその要求に彼らのできる範囲で答えてくれた、ということです。なにより、こんなに自閉症の特性が強い子を普通クラスで面倒見てくれたことは、すごいと思う。感謝です。




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by amelie_uk | 2012-08-16 08:46 | TAへの道